フランスの木版画家ミッシェル・ラッセルのこと【寡黙な黒、雄弁な白ーミッシェル・ラッセル木版画展によせてー】 わたしが初めてラッセル氏の作品とであったのは、 2004年吹田で行われた日仏の作家による 版画とポピュラーアートの展覧会でのことでした。 フランスの作家たちは社会風刺がするどく、 貧困、テロ、マスメディア、エイズ、さまざまな社会問題を取り上げる中で、 彼の作品は静かな、ごくありふれた日常がたんたんと描かれたものでした。 それはとても共感するなにかを感じました。 彼は物静かな、思慮深い紳士かもしれない、という印象をもちました。 1年後にわたしは彼と、パリの版画工房の中庭で会いました。 快活な動作、よくしゃべり、よく食べる人なので、少し意外な気がしました。 彼は映画、演劇が好きで、自ら劇の中で詩の朗読をしたり、 また彼の木版画作品をもとに、 アニメーション作品が作られたこともあります。 黒沢や溝口、宮崎、中でも好きなのは小津安次郎監督だという彼に納得しました。 ラッセル氏の作品は、たんたんと穏やかな表現、 ときとしてユーモラスな空気さえあります。 その奥にある情熱や信念、不安や悲しみ。 内面をどう表すか、ということに、彼の表現は集約されていました。 彼は文楽の語りや無声映画の弁士にも興味があるといいます。 版画の人物、動物たちを見ていると、 白と黒の世界の中で、実にいろいろなことを語りかけてきます。 昨年彼は、犬を抱き上げ椅子にゆったりと座るマダムと、 犬をまたいで立ち、まっすぐにこちらを見つめる少女の、 興味深い2作品を送ってきました。 2作品を見比べているうちに、彼を日本に呼びたい、と思いました。 ミッシェル・ラッシェル、彼はもしかすると限りなく日本的な版画家 なのかもしれない、という思いにとりつかれています。 ……………<ギャラリーびー玉 上山榮子>
by amanedo_g
| 2006-08-21 21:36
| archive 画廊風景
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