【18日】8月平常展示は明日19日まで

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■そぞろ通信■2月号*2003-2-16

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発行☆山口平明(天音画廊)

*>もくじ<*
[1]漫歩系_イラン映画「酔っぱらった馬の時間」|山口平明
[2]家事細見帖・便所掃除の巻|岡本尚子
[3]編輯後記|へいめい
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■1■漫歩系sozoroaruki...............................山口平明

  【クルド語のイラン映画「酔っぱらった馬の時間」】

 クルドは国をもたない民族、中東地域の先住民であり、トルコ・イラ
ン・イラク・シリアにまたがる山岳地帯のクルディスタンと呼ばれる地
域に住む。イラクの人口二三〇〇万人に匹敵するか上回るとされる「少
数」民族である。半数以上がトルコにおり、トルコ総人口の四分の一を
占めるものの、公式にはクルド人を認めず、山岳トルコ人として同化政
策をとっている。トルコは民族主義のクルディスタン労働者党を弾圧、
しかし、EUへの加盟が悲願であるため、難しい局面に立っている。

 それぞれの国に独立や自治を求めるゲリラ組織があり、大同団結でき
てはいない。イラン・イラク戦争(80~88年)では国境付近が戦場とな
り、双方が敵国のクルド人組織を応援した。停戦後、フセインのイラク
政府はイランに協力したクルド人地区へ制裁を加えた。一九八八年三月、
毒ガスによって五〇〇〇人を虐殺したハラブジャ事件である。このとき、
アメリカ政府はフセインを支援していた。

 ノーム・チョムスキーは言う。《フセインは犯罪者です。当時も、い
まも。しかし彼の犯罪と米軍の攻撃とはまったく関係がありません。そ
れはたしかなことです。この問題について西側知識人が沈黙を守るのは、
あまりにも卑屈ではありませんか。イギリスとアメリカがフセインの圧
制を支援していたことは知識人なら誰でも知っているし、今、彼を悪の
手先のように非難するのが極めて偽善的であるのもわかりきっているの
に、誰ひとりそうは言わないのです。なぜならば、知識人は権力に従わ
なければならないと知っているから……事実を口にしてはいけないと知
っているからです。権力には迎合して、指導者を称えなければならない
とね。それを確かめたいなら、「そうとも、あいつは犯罪者だ。ありと
あらゆる恐ろしいことをしでかした…我々の支援を受けて」と言った者
が何人いるか、数えてみればいい。そう言えないのなら偽善者です。ま
ったくの嘘つきで偽善者です。それが知識人の限界なのです》(月刊
「プレイボーイ」二〇〇二年六月号、辺見庸との対談より)

 イランでも第二次世界大戦後、クルディスタン人民共和国を樹立した
が軍により崩された。一九七九年のイラン革命ではパーレビ王朝打倒に
参加したが、新政権によって制圧。イライラ戦争のとき、イラクの支援
でゲリラ戦を展開した。だから、クルドといえばゲリラと思われるよう
な情況がある。
     *
 アーマネちゃんという女の子が出てくるイラン映画がくるから、ぜひ
見に行ってよねと試写を見た友人からすすめられた。「酔っぱらった馬
の時間」である。本だって親しい人から「これいいよ」と推されると、
よし読んでみようとなるものだ。映画もいっしょ。

 イランのクルド人地域、バネー市出身のバフマン・ゴバディ監督は、
1969年生まれ。映画「酔っぱらった馬の時間」の製作時は三十歳と
いう若いクルド人だ。この作品が初の長編映画で、2000年のカンヌ
国際映画祭「カメラドール新人監督賞」および「国際批評家連盟賞」を
受賞している。もちろん911の前である。

 彼はイランの有名な監督、アッバス・キアロスタミの「風が吹くまま」
(1999年)で、チーフ助監督をつとめた。またこのあとサミラ・マ
フマルバフ監督の「ブラックボード 背負う人」には出演もしている。

 「酔っぱらった馬の時間」(80分)は、ドキュメンタリーかと思うよ
うな映画だ。事実に基づいているらしい。映画では、イラク国境に近い
イラン領クルディスタンのサルダブ村に暮らす五人きょうだいの子ども
たちの辛苦にみちた厳しい日常生活が描かれる。

 女三人男二人のきょうだい。語り手は次女アーマネ。この名前は少女
女優さんの本名みたいである。不治の障害でいのちも危うい十五歳の長
男マディを、姉、妹、弟たちで守って生きていく物語である。

 マディは、冗談で三歳と自称できるぐらいに、知的には障害はなさそ
うだ。ただ手足の成長がきわめて低く、胴体と頭は発達していくから心
臓に大きな負担がかかり、生命がいつ絶えてもおかしくない障害と難病
をもつ少年である。

 難病がもたらした四肢の未発達によって、マディは幼児のように見え
る。顔は少年のそれである。雪道を歩かせられないから、次男のアヨブ
や妹のアーマネに抱っこされる存在でもある。薬を飲まされ、村の医師
にお尻に注射をしてもらわねばならない。

 末っ子の三女を生んだときにお母さんは死んだ、とアーマネによって
語られる。父さんは、イラクへの密輸品の運び屋として働いていた。バ
ネー市へ働きに行ったアヨブらが村に帰ってきたとき、父さんは国境で
地雷にやられて、遺体はラバにのせられ村に帰ってきた。長女ロジーン
が、父さんの亡骸に取りすがって泣く声が谷間に響く。

 叔父さんがいるけれど、八人もの子がいてどうにもあてにできない。
その叔父さんは、十二歳のアヨブに「お前がこれからは家長だ。学校は
諦めて働け」と言う。孤児になった「家長」のアヨブは食うために働く
だけでなく、マディの手術治療費を稼がねばならない。

 大人に伍して働く子どもたちは、一日の労働を終えて町から村に帰る
トラックの荷台で声をはりあげて「人生は苦労ばかり。子どもですら老
いていく」と歌う。働けないマディはきょうだいのお荷物のように見え
るのだが、むしろ姉さんのロジーンにも次男アヨブにも、そしてアーマ
ネにも生甲斐や働き甲斐を与えてくれているみたいだ。

 もの思いに耽ったりしているヒマがあったら、体を動かして金を稼が
なくっちゃねえ。重い荷物だってアヨブは大人にまじって運ぶ。でも賃
金は払われないなんてことも。二か月働いたが、手術代は稼げなかった。
マディは死ぬかもしれないというのに。叔父さんが怪我で休んだ。ラバ
を貸してもらったアヨブは勇躍、密輸の運び屋の仕事に出かけるも、国
境警備隊に追い払われて逃げ帰る。ちっともええことないのだ。泣いて
るヒマもない。

 ラバは重い重い荷駄を背負わされ厳寒の山岳地帯を行く。元気づけの
ためにウイスキーを注いだ水を飲まされる。酔っぱらったラバが、馬鹿
力/馬力を発揮するのかどうか。イスラームは酒を呑まないはず。ラバ
は特別なのか。寒さの程度によってウイスキーの量が加減される。

 まるでラバのような生き方を強いられるクルドの人びと、特にその子
どもたちの働きぶりの見事なこと。バザール(パルコじゃないぜ)で、
大人に仕事をもらって、というかありついて独楽鼠のように立ち働く。
ガラスのコップを新聞紙でくるむ仕事。こっちの荷物を運んでくれ、の
声に駆け出すアヨブは、妹のアーマネに替わってと叫ぶ。でもね、お兄
ちゃんは「アーマネは学校をつづけていいよ」と言ってくれてる。近く
には長男のマディが、じっと大きな瞳でアヨブやアーマネの姿を追いか
けているんだ。

 長女のロジーンは、叔父さんの図らいというより差し金で縁談がすす
められる。ないがしろにされたと怒るアヨブは叔父さんに殴られる。こ
こで初めてアヨブは泣く。悔し泣きだ。しかし、手術代を稼げなかった
のだから自分がお嫁に行けば、町でマディは治療を受けられる、と姉さ
んは語る。アヨブは、雪深い山道をたどって、叔父さんとともに姉さん
を見送りに出かける。

 国境で花婿側の母親に、マディの面倒は見れない、連れて帰れと言わ
れる。叔父さんは怒って約束違反を言い募り、ラバ1頭と引き換えにマ
ディはもどされてしまう。重症心身障害の子が厄介視されるのは何処も
同じである。手術しても寿命は長くないって、お医者さんは言ってたけ
ど、ンなことは構うもんか。きょうだいがマディを抱っこして、面倒が
らずにともに暮らすこと、これがぼくらにとって大切なことなんだ。

 アヨブは、ラバをイラクで売り、マディに手術を受けさせて戻ってく
ることを決心する。密輸の隊列に加えてもらうことになんとかこぎつけ
る。お兄ちゃんのマディを背負い、ラバを引いて行くのだ。ロジーン姉
さんが嫁に行ったから、末の妹はあたしアーマネがみなくっちゃねえ。

 今日はすごく冷えてるぜ、酒を四本に増やしとけ。出発前のあわただ
しいところへ、アーマネがお兄ちゃ~んとやってくる。どうしたと聞く
兄にお弁当をさしだす妹。お兄ちゃん。なんだ。もう一冊ノートが欲し
いの。よし判った、買ってくる。妹を頼むぞ。

 またも国境警備隊の待ち伏せにあう。荷物は重い大きなタイヤだ。大
人も隊列を崩して必死に谷間へ逃げこもうと走る。追っ手は迫る。だが、
ラバは酔っぱらってへたりこんでしまう。荷のタイヤを外さないといけ
ない。退路は断たれた。タイヤが谷へ向かって転がる。このシーンは迫
力がある。「戦艦ポチョムキン」を思い出した。

 大人は誰も助けてくれやしない。ラバの背のタイヤをやっと外して、
ひとり国境の有刺鉄線にたどりつく。アヨブの背からマディが顔を出す。
またいっそう弱ったことだろう。でも生きてる。いのちはあった。有刺
鉄線を踏み越えて、苦難をともにしたラバを引き二人はイラクへはいっ
て行く。

 映画はここで終わる。アーマネちゃんのお兄ちゃんのマディは生きて
いるのか、アヨブはまたバザールで働いているのか。なにも示してくれ
ない。アヨブの瞳の力強さとアーマネの愛らしい頬がぼくの心に残る。
せめてラバが高く売れてマディの手術がうまくいきますようにとつい画
面に祈ってしまった。
 「人生は苦労ばかり、子どもでさえ老いていく」

 バフマン・ゴバディ監督の観客へのメッセージとして、《この作品の
クルド人たちは私の想像ではなく、生きようとあがく現実の彼らそのも
のだ。30年間身近に接した同胞たちの姿なのである》という。この人は
これからも現実のクルディスタンを踏まえて、ここを強固な拠り所とし
て映画を創っていくにちがいない。厳寒期の雪の場面が多かったが、夏
のクルディスタンの風景も見てみたいものだ。
     *
 ぼくは一月下旬、この映画を大阪のシネフェスタ4で見た。題名の馬
はほんとはラバのことである。辞書『大辞林』によると《雌ウマと雄ロ
バとの一代雑種。ふつう繁殖力はない。ロバより大きく粗食に耐え、体
質は強健でおとなしい。南欧・西アジア・アフリカの一部で使役用とさ
れる》とのこと。ぼくなら「酔いどれラバのとき」ぐらいにするが。

 「酔っぱらった馬の時間」は、「そぞろ通信」神戸在住の読者が調べ
てくれたところによると、今月下旬、神戸で上映される。
 次に案内を付しておきますので、興味をもたれたかたはどうぞ。

☆「酔っぱらった馬の時間」の神戸上映スケジュールです☆
★KAVCキネマVol.124「酔っぱらった馬の時間」
 ○日時:2月22日(土)~28日(金) (25日休館)
 ○場所:KAVCシアター
 ○料金:前売1400円(当日一般1700円、学生1400円、シニア1000円)
 ○上映スケジュール:13:00/14:40/16:20/18:00/19:40
 ○上映作品:「酔っぱらった馬の時間」(監督:バフマン・ゴバディ
  /出演:アヨブ・アハマディ、アーマネ・エクティアルディニ/20
  00年/イラン/80分)
 ○お問い合せ先:078-512-5500(KAVC)【自主】
KAVCシアターは新開地から南へ3分、「神戸アートビレッジセンタ
ー」の中にあります。(情報提供は土原由香さん。感謝)

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■2■家事細見帖/便所掃除の巻........................岡本尚子

厠にも 明かり一筋 春隣

 七人で小さな家に住んでいますが、トイレだけは一階と二階に一つず
つあります。

 若い男の子のオシッコの勢いはスゴイ。泡が立っています。当然しぶ
きも飛びます。また、小さい男の子は必ず便器外にこぼしています。

 二つとも洋式ですが、そうじは和式の便器のほうがゼッタイ簡単です。
洋式便器は便座やフタや便器の本体も構造がフクザツ、あらゆる所にし
ぶきが飛んでいます。トイレブラシで便器の中はこすりますが、他のあ
らゆる所はゾーキンで拭く。毎日これをやっても夜にはクサくなってい
ます。

 が、しかし、他人の家のトイレは取材におじゃました時よく入るので
すが(私はボウコー炎が持病なのデス)、100%の家がキレイだった。
においもしない。家族の人数がさほど変わらない家でも。スゴイふしぎ
…。それもその時だけがきれいな風でもなかった。マサカそこで「どん
なソージをして何故キレイなのですか」とは聞けまい。

 その昔、年寄りと赤ちゃんをかかえ、トイレそうじもままならぬ私を
見かねて、夫が便利屋さんにトイレ掃除を頼んでくれたことがあった。
その頃はトイレ掃除をどれくらいの割でしていたのか覚えてもいないの
だが、ものの5分で終わった和式トイレ一つの掃除の値段は覚えている。
三千円!。ヒェー。今ではとても考えられない…。

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◎[平明舎余談]
 天音は毎日、母親が浣腸を入れてうんこをさせていた。場所は温度調
節がきく居間。おしっこはオシメにしていただく。便意があろうとなか
ろうと、時間がきたらビニールクロスを敷いたソファの上で、紙オシメ
を広げて粛々ととりおこなう。浣腸を入れるとすぐに出るときもたまに
あるが、たいてい一時間はかかる。天音のお腹をさすったり綿棒で肛門
をちょいちょいと刺戟する。ひどいときは二時間もかかる。
 お出ましになったうんこはウンチバケツに入れられる。それを父親が
便所にもちこみ、常備のゴム手袋をはめて始末する。布オシメのころは
流水のもとで黄色い汚れをこすり洗いする。このとき注意すべきは、お
尻を拭いた紙の処分だ。水に溶けやすいトイレットペーパーといえども
固まりをほぐさず流すと、管がつまり汚水が逆流して便器からあふれて
しまう。天音はとうとう便所を使わずじまいだった。

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■3■編|輯|後|記..................................へいめい

○忌日の十六日に配信できなかった。自分の原稿が捗らなかったのが遅
れの原因だ。寒さのせいか、細君が一月末に寝込んだためか、どうも今
月上旬は調子が落ちてなにごともうまく運ばなかった。こんなときもあ
るわさ…。
○前にふれた糸井重里の「ほぼ日刊イトイ新聞」サイトで話題になった
「80代からのインターネット入門」が紙の本になっている。題は『豆炭
とパソコン』、世界文化社二〇〇〇年十一月刊。これも面白く読んだ。
主人公のミーちゃんは一九一九年生まれの糸井氏の実母だ。彼の両親が
離婚して父親にひきとられたので実母とは今まで十回ぐらいしか会って
いないらしい。その群馬在住のミーちゃんが、息子の思いつきでiMa
cを送られ、よきボランティア講師を得てパソコンに軽々と挑み、楽し
げに電子メールをやりとりするまでになる。パソコンもインターネット
も八十歳の人が出来るようになれば誰だってやろうという気になる。そ
んなことよりもミーちゃんの暮らしや生き方をのぞかせてもらって、ご
くごくありふれた人びとにただよう「偉さ」に感嘆させられる。
 紙の本にはサイトで同時に展開されてるようなライブ感はないが、そ
のかわり《最も大事なエッセンスの部分は、こうしてまとめ読みしたほ
うが匂い立ってくるもの》なのであり、編集のチカラなんである。紙に
印刷製本された書籍の偉さも味わえるわけです。ぼく、図書館で借りま
した。ほっほっほっ。
○次号は3月16日に配信の予定です。今回は背信やてか。「そぞろ通信」
を待ってくれてる誰かさん、そんなあなたが好きッ。ほっほっほっ。

◎本誌は【1行32字】で改行、閲覧には【等幅フォント】が推奨です◎
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月刊【そぞろ通信】2月号_#17□2003-2-16発行配信
創刊2001-10-16□「あまね通信」改題通巻102号
編輯発行人□山口平明(天音画廊)

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※転載転送はひと声かけちょくれ。部分引用は掲載誌を送ってちょ。
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*「そぞろ通信」2月号ハココマデ
[PR]
by amanedo_g | 2008-08-18 23:39 | haymay 山口平明
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