【平明文集】☆「そぞろ通信」40号☆2005-1-16配信分

〇堂守こと山口平明が過去に書いたテキスト(文章)を再録転載しています。
ご興味のあるかたは、左下のMoreをクリックしてご覧ください。
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山口ヒロミ、terra cotta、2003






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★そぞろ通信#40★1月号*2005_1_16
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発行☆山口平明(大阪・天音堂G)
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■もくじ■

[1]archives◇ 十八歳、天音の四季をたどる《9》_/~山口平明
[2]家事細見帖 正月の食事の巻_岡本尚子
[3]編輯後記_/~haymay

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■1■《archives》十八歳、天音の四季をたどる《9》[一九九九年十
二月] 山口平明

以下の文章は、一九九九年(天音十八歳)後半から一年にわたり、松下
竜一さん主宰発行のミニコミ「草の根通信」に毎月連載で書いていたも
のです、単行本未収録。
なお松下竜一さんは、去年二〇〇四年六月十七日に逝去されました。
六十七歳。また、娘の天音は二〇〇〇年十月十六日に、十九歳四か月で
死亡しました。「草の根通信」を購読していなかった皆さんに読んでい
ただきたく「そぞろ通信」に再録しました。

◆━━━━━━一歳からずっと体重に変化なし━━━━━━◆

【十二月四日】高校時代のクラスメートTFさんと梅田で会う。神戸
に住む彼女は大阪に用事があってきたついでに、私のサイン本を数冊買
ってやろうと電話をくれた。この人は妻君の本を周辺の人たちにたくさ
ん売ってくれた、私たちにとってありがたいありがたいお客さまなので
ある。口惜しいけれど私の本はヒロミ本ほど売れてはいない。

 主婦の彼女は、ヘルパーの講習を受けて、自宅近くの特別養護老人ホ
ームで週三日勤務している。老親の介護をしてきた経験を社会で役立て
たいと思っているやさしい女性である。天音にといってクリスマスの飾
り物(リースというのか)を贈られる。

 TFさんとは高校のときも卒業後もまったくつきあいはなかった。一
九九五年一月の大震災のあと、東京に住む同級生たちが関西で被災した
友人たちに問い合わせのアンケートをだし、その回答を一冊の文集にま
とめてみんなに配った。この文集に私のささやかな地震体験記(「あま
ね通信」に書いたもの)が載り、それを読んだ彼女が連絡してきてから
交友は始まった。

 彼女と私は、さしむかいでたこ焼き(明石焼き)を食べて割り勘で会
計をすませて店を出ると、ちょうど勤め帰りの人々が街路にあふれてい
る。二人ともお互いにゆっくりとおしゃべりできる時間はない。買って
くれた本の重い袋を片手に下げて、阪急電車の改札口へ向かう彼女を見
送る。

【十二月六日】天音の体重が落ちてきている。入浴後に計ったら七・
五キロしかない。八キロあると顔もふっくらしてみえるが、五百グラム
でも下がると、たちまち頬はこけて骨の上に皮膚が被っているだけのよ
うになる。

 毎日の哺乳瓶での食事量はほとんど変わらない。親にも判らないよう
なストレスが影響しているのだろう。一歳から変化のない体重。体調が
安定して八キロをこえても、いままで九キロになったことは一度もない。

 七キロをきると危ない。高熱がでたときに予備力がなく、病気を重く
させてしまう。七キロ台の数百グラムの上下に生命の行く末がかかって
いる。

 昨日の「朝日新聞」の「わが家が立場を問われたら」の囲み記事で、
国旗・国家法の制定にともなう国民の動きへの懸念と不安を扱っている。
十月に国体が開かれた熊本県では、開会式前日に熊本城二の丸公園で
「天皇陛下ご即位十周年をお祝いする県民の集い」がもたれ、六千人も
の参加者が日の丸を手にしていたという。

 勤務時間内だが上司から社員十人が「当番」で行くようにいわれたと
か、四つの私立高校の生徒二千人が動員された、とある。

 熊本県知事の祝辞。《皇室三千年の歴史は国民の誇りであります。戦
後、歴史の否定から暗黒の時代が長く続きました。しかしその時代も国
旗・国家法の制定でようやく明けようとしています》。つづいて県内市
町村長を代表してあの水俣市長が挨拶。《天皇陛下におかれましては、
園遊会で水俣病のような、ほんの日本の地方の小さな出来事にお心をは
せていただき、深い感激を覚えました》。

 熊本大学の学生の奉祝の言葉。《外国の障害者にもお心を配られるよ
うなおやさしい元首を頂いているのは、世界広しといえど、日本だけで
はないでしょうか》。最後は五千人の提灯行列でしめるという一大行事
だ。

 田中伸尚さんのコメント。《熊本のような奉祝の集いが粛々と行われ
る下地は、全国各地にあまねくある。問題は行事が存在することではな
い。水俣病を『地方の小さな出来事』と表現しても、会場のだれも驚か
ないような想像力の欠如が、国民を覆っている。この方が大事だ。そう
した素地の上に不況などの要因が重なって、九〇年代型の国家主義が出
てきている》。

 じゃあどうすりゃいいのか。私も好きな文芸評論家の斎藤美奈子さん
は、《いま、何千、何万という人が一つのものに心を寄せることの不気
味さを感じる》といい、戦前の国防婦人会や愛国婦人会を調べると、現
代の消費者運動やボランティア運動とノリが似ていることに驚くという。
えっ、そうか、ノリというとらえ方は戦前はなかっただろうが、付和雷
同あるいは軽佻浮薄といいかえればよく分かってくる。強制じゃないが、
そうせざるをえない事なかれ翼賛とでもいえるような空気と雰囲気。

《個性化が進んだと言われるけれど、その一方でみんな、マス(集団)
でくくられることに慣れちゃってる。これから全体主義的な流れに歯止
めをかけるとしたら、それぞれの問題の是非で判断するのではなく、み
んながイエスというものにノーと言っていくようなあり方でしかないの
かもしれない》との斎藤さんの言葉を、愚かな私はよく解ってないのか
もしれないが、臍曲がりで天の邪鬼なぶん「みんながイエスのときに自
分はノー」といって少数者になるのは大好きである。ええぞ、ええぞ斎
藤、よおゆうてくれた。(「朝日新聞」一九九九年十二月五日朝刊、
「日本は変わったのか/第3部「わが家が立場を問われたら 提灯行列」
の記事によった。)

【十二月十三日】仕事机の照明器具が故障する。スイッチが具合悪い。
ネジ回しで分解して調べてみるがだめだ。ハンダづけしてある部品ごと
交換しなくてはいけないようだ。

 抱っこ抱っこの天音のいるわが家では、さっと事は運ばない。夫婦の
どちらかが、外出するとなると、その手当てが大変である。かつてビデ
オデッキの故障では修理の人に家へ来てもらった。照明器具は持参しな
くてはいけないだろう。いずれ暇をみてもっていくことにして、近くの
店で安物のアームスタンド式の照明器具を買ってくる。ようやくこれで
ひと安心。

 妻君が外出するのと私のそれとではまったく段取りがちがうし、天音
への影響も全然ちがう。であるにしても家にいて仕事をする私の気持ち
としてはそれなりに気をつかっている。

【十二月二十二日】昨夜、ある会合で空きっ腹に焼酎を飲んだせいか、
かなり酔ってしまう。若くて体力のあるMKさんが自転車の荷台にのせ
て家まで送ってくれる。もちろん妻君は怒髪天を衝く勢いなり。

 母子の寝静まるのをまって仕事部屋にひきこもり明け方まで、「あま
ね通信」83号の編集後記を書く。三時間ほど仮眠をとって、起きてきた
妻君に夜中に書いたばかりの原稿のプリントを渡すと、天音に食事をさ
せてからすぐに版下への貼りこみにとりかかってくれる。私はその間に
版下校正にとりかかる。

 揃った版下を印刷会社へ自転車で届ける。昨日今日と自転車ばっかり
やなあ。二人乗りの後部座席(荷台)に耐えたお尻の痛みとヒロミさん
に叱られた心の傷みがリンクされて、そこはかとなく年末ちゅうかミレ
ニアムちゅうか、「あまね通信」を二人で力を合わせてやれたなあ、と
いう喜びと満足の思いがわいてくるんやった。

【十二月二十七日】またまた自転車で「あまね通信」83号完成品を受
け取りに印刷屋さんへ。ヘルパーさんにも手伝ってもらい、食卓を囲ん
で発送作業に集中。郵便番号は住所シールに記載してあるが、年末はミ
スが起きやすいため、封筒の上端にも書き込む。天音はなぜか静かにし
てくれる。雰囲気を感じてくれてるのかも。

 夕食後も作業を続行。夜十時すぎ、私が眠そうにしていたせいか、珍
しく妻君が投函に行ってくれる。天音は「静かちゃん」、こんな日は飲
みがわるい。

【十二月三十一日】天音との暮らしはじつに気ぜわしく心がせいて、
一年なんてあっという間に過ぎてしまう。二〇〇〇年問題が世上うるさ
いけれど、わが家はなんの買い置きも準備もせずじまい。暖房も風呂の
湯も電気に頼っているが、停電のときはそのときと、腹をくくるでもな
く居直るわけでもなく、友人知人や人さまに助けてもらえばいいと勝手
に思っている。 (初出「草の根通信」二〇〇〇年3月号)

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■2■[家事細見帖]正月の食事の巻_/~岡本尚子

【正月は 立ち喰ひと 腹くくりたる】

 去年の年末も、取材と原稿三本かかえてしまった。しまったしまった
…。どうしょう…よし!「お母さんゲンコーあるから」と子どもたちに
おせち料理のレシピを渡した。「げえ、今年も?」とげんなり顔の子を
背に「うまくいったぞ!」。出来なんてどうでも良い。喰えればいいの
だ。

 どっこい年が明けて、子どもたちは喰らうだけと化し、箸を持つだけ
となった。料理をつめるのも、お雑煮作るのも、入れるのも、皿を出す
のもみんな私の仕事。

 また、子どもらはよく食べる。一品置いて、次を盛ってふり向けば、
何もない。その間、酒を燗したり、おかわりを入れたり…。

 そして、元旦から客登場。おせちをつめ、箸を出し、酒を出し、お茶
を出し、コーヒーを出し、お菓子を出し、ぜんざいも作り、出し…。帰
れば、次の客が…。また、おせちをつめ直し、箸を出し、酒を出し…。

 それが帰れば、家族の晩ごはん。おせちの他に、いため物、汁物…あ
っという間になくなる。お重もカラッポ…。

 それを3ヵ日続けましたワ。ああシンド。正月は来てほしくないゾ!
誰が正月を作ったのじゃ。

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■3■編輯後記 henshukoki

☆今年初めての「そぞろ通信」をお届けします。このところ企画展のた
めの調べ物と勉強に明け暮れている。受け身で生きてきた小生は、先を
見通して計画をたてるというのは苦手中の苦手だ。

☆変則でも非常識でも自分のやりやすい手法で美術と文芸を結びつけな
がら、スローライフ、スローワークを旨としつつ独自の行き方ですすめ
ていきたい。ところで、スローというとエエカッコだが、のんびり暮し、
ノロノロ仕事といい変えるとショボくなるね。どうせ還暦になってから
始めた画廊事業だもの、洋々たる将来は微塵もない。

☆とはいえ作家のほうからすると急に企画を提案されても困るだろう。
そのへんお互いの調整がなかなか難しい。ずっと先々まで見通して計画
しても、こっちがそれより手前で死んでしまうことも充分にありうる。
(七年前、いっぺん死にかけた。)

☆ぼくのライフワークは、娘・天音と共に棲み暮らした二十年にあった
と思っている。その喪失による無気力の空隙ををふさぐものとして、あ
の子の追悼になることをしたいと画廊を始めた。有体にいえば、なにか
に没頭していれば無力感を抑えられるてなもんである。

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■蛇の足■

◇天音堂ギャラリーにかかわることは、インターネットの「さるさる日
記」に書いています。これは自分のホームページがなくても、フリー
(無料)でレンタルしてくれるものです。アップロードも実に気軽にでき
るので、ぼくみたいな永遠ビギナーでもつづけてやれている。消息がわ
りに読んでくださればありがたい。購読はもちろん無料です。
タイトルは、【「天音堂ギャラリー」堂守そぞろ日誌】。
グーグルやグーなどの検索サイトでこの言葉を入力してもヒットします。
ここから次のアドレスをクリックしてもサッと日誌へ飛びます。
http://www3.diary.ne.jp/user/348493/
◇ケータイにも対応しています。
http://www3.diary.ne.jp/i_log.cgi?user=348493&log=now

◇急に決まった企画あるいはオフ会とか飲み会の告知、緊急の助っ人の
お願いなどを、この日誌に書いていきます。世路支駆。

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◎本誌は【1行32字】で改行、閲覧には【等幅フォント】が推奨です
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月刊【そぞろ通信】1月号_#40□2005_1_16発行配信
創刊2001-10-16□「あまね通信」改題通巻125号

編輯発行人□山口平明(天音堂ギャラリー)

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*「そぞろ通信」まあ寒いぞ睦月号ココマデ。近況お便りください。
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by amanedo_g | 2008-09-10 00:10 | haymay 山口平明
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