【平明文集】☆「そぞろ通信」41号☆2005-2-19配信分

〇堂守こと山口平明が過去に書いたテキスト(文章)を再録転載しています。
ご興味のあるかたは、左下のMoreをクリックしてご覧ください。
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山口ヒロミ、terra cotta、2003




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★そぞろ通信#41★1月号*2005_2_19
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発行☆山口平明(大阪・天音堂G)
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■もくじ■

[1]archives◇ 十八歳、天音の四季をたどる《10》_/~山口平明
[2]画人手帖その1 「タカハシノブオ」の巻_/~サカモトユタカ
[3]編輯後記_/~haymay

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■1■《archives》十八歳、天音の四季をたどる《10》[二〇〇〇年一
月] 山口平明

以下の文章は、一九九九年(天音十八歳)後半から一年にわたり、松下
竜一さん主宰発行のミニコミ「草の根通信」に毎月連載で書いていたも
のです、単行本には未収録。
娘の天音は二〇〇〇年十月十六日に、十九歳四か月で死亡。「草の根
通信」を購読していなかった皆さんに、天音の最晩年の共棲ぶりを読ん
でいただきたく「そぞろ通信」に再録しました。
なお、松下竜一さんは、昨年二〇〇四年六月十七日に逝去、六十七歳。

◆━━━━━━平々凡々たる日をかさねて━━━━━━◆

【一月一日】妻君のヒロミは午前中、散歩をかねて難波神社まで歩い
てきたそうだ。残り二名は昼まで眠っていた。
 
年賀状の返事をそれぞれにしたためる。私たちのミニコミ「あまね通
信」の読者でも年賀状をくれる人がいる。この人たちには返事なしとし
てある。ふだんの手紙のやりとりはなくとも、一年に一度くらい年賀葉
書で近況を知らせあうのもいいものだが、きまりきった挨拶だけの賀状
には「なんだかなあ」と思ってしまう。

 Eメールの年賀もきている。「あまね通信」の奥付にアドレスを記し
ておいたからだろう。

【一月二日】JR難波駅(旧湊町)のビル内の丸善書店へ。「スイッ
チ」誌で岡崎京子特集を見かけ立ち読み。正月気分でいると、本や雑誌
を買いたくなる。我慢、我慢といいきかせ、リハビリもかねて立ち読み
に徹する。

 年末に年賀状代わりに出した「あまね通信」83号に、今年一年分の購
読料をいただくように振替払込票をいれておいたのだが、さっそく読者
から払込みがありその振替票の写しが貯金事務センターから送られてく
る。正月で日曜日だというのに、年末に払い込まれた分がきちんと処理
されて入金通知がきたわけである。郵便貯金業務の几帳面さに感心して
しまう。

 妻君と私は、かわるがわる天音を抱いてテレビをみてばかりいる。

【一月三日】このところ生活リズムが変動し、朝から眠るようになっ
てしまった。暗闇でじっと横になっているのはつらいので、起き出して
机にむかって読書したり書きものをしたりしている。倒れてちょうど二
年半がたつ。

 躰のいうままにまかせてできるだけ自然にして暮らすようにしている。
でもねえ、と自分のなかの生真面目な私がそんなことでいいのか、と問
うてくる。経済はどうする。書く仕事はやらないのか。もう今年九月に
は五十七歳だぞとそいつは責めはじめる。

【一月四日】天音が哺乳瓶で食事をとるときに、顎の下にあてるタオ
ルを洗濯。三日に一度洗っている。

 干し上がったのを手でもんで肌ざわりをやわらかくする。いっぺんに
何枚もできないから二、三枚もんでは箱にいれ時間をおいてはまたとり
かかる。柔軟剤をずっと使ってきたが、かえって防水されてしまうと気
づいて入れるのをやめて以来のもみもみ作業だ。

 なぜだか人恋しくて、漫談をかわすような集まりはやれないものかと
ふと夢想する。研究とか勉強とかじゃなくって、個人の経験にのみしぼ
ってしゃべり、それぞれがその話に思いあたることを自分の言葉で話す
ようなほんわかとした集いである。

【一月五日】妻君は午前中にプールへ初泳ぎ。毎週かよっている銅版
画教室は休み。夕方に堺市の実家へ妻君一人で両親に顔を見せに行く。
私は、ヘルパーさんに天音を抱っこしてもらい骨休めをする。

でも洗濯はかかせない。天音は毎日パジャマから普段着に着替える。
尿やうんこがおしめの脇からよくもれてしまう。よだれでシャツは常に
ぬれる。汚れ物のほとんどは天音のものだ。

 妻君がもどってきてあらましの報告を聞いた後、夜中に干し物をする。
ベランダだけでは足らなくて、室内の温水器の横の隙間に針金ハンガー
に干し物をかけていく。

【一月六日】今年初めての通院。午前中で終わる。帰りにSSさんを
自宅に訪ねる。

 彼は煙草屋兼駄菓子屋を営む。お母さんが脳血栓で躰が不自由だから、
店番をしながら一緒に暮らしている。旨いのどごしの酒をふるまっても
らう。今年初の日本酒だ。

 手土産にもらった駄菓子はすべて袋に入っていて、賞味期限が記され
ている。小さな梅干しが四個の「ウメトラ兄弟すぱっちゅ」30円、「チ
ョコバット」20円など。帰宅した私は「ベビースター焼そば」をカリカ
リしつつ発泡酒を飲みましたぜ。

【一月七日】天音が機嫌悪い。躰を反らし捩じり、眉間に皺をきざん
でうなるように泣く。妻君が浣腸をいれてうんこをさせるけれど駄目。
母親のほうも低気圧になってくる。私はなんの役にもたたない。

【一月八日】天音の機嫌なおる。どんな加減なのか、よく判らない。
 山田太一脚本の「そして友だち」というテレビドラマを見る。深田恭
子いいなあ、とにやけてたら、「山田太一は一流やわ。私ら二人ともも
の書くのはやめよう。次に生まれるときは肉体労働でやっていけるよう
にしよう」と妻君がのたまう。

【一月九日】ワインをお土産に東京からYTさん来宅。ヒロミさんの
本を出版してくれたYさんは、こうして「天音に逢いたい」と年に二度
くらいきて泊まっていく。

【一月十日】天音、ケイレン発作が多い。飲みもよくない。

【一月十一日】ヒロミ本の注文くる。在庫がないので、すぐYTさん
に電話して送ってもらうように手配。

【一月十二日】昨夜は早く寝つけた。一回小便に起きたが、つづけて
八時間も眠れた。こんなのは久しぶりだ。

【一月十三日】また朝から眠り昼に起きる。元の木阿弥。睡眠時間は
短い。でも頭痛はないからありがたい。
 天音に飲ませていた妻君は、私の顔をみると食事を用意してくれる。

【一月十四日】便が固くて便秘症状。あまり経験がないので、天音の
苦しさがいまごろ分かる。摘便で解決。

【一月十五日】古本屋で買った三木卓著『生還の記』(河出文庫)を
読む。私は脳血管のバイパス手術を受けたけれど、この詩人は心筋梗塞
で心臓血管のバイパス手術を受けた。血管撮影や不整脈や導尿カテーテ
ルと聞きなれた言葉がでてくる。しかも同じ薬(パナルジン)を飲んで
いる。

【一月十六日】雨で散歩かなわず屋内階段を上層階まで二往復。

【一月十七日】ヒロミさん、病院へ天音の薬を処方してもらいに自転
車で行く。外出のさいに用事をいっぺんにすませようとしてあちこち走
りまわって疲れたみたいだ。

 東京の恵子さん来宅。福祉マンションをつくる会で関西へ講演に来た
帰りに寄ってくれた。

【一月十八日】私の体重五四キロ足らず。発病前より十二キロ痩せた。

 妻君の機嫌悪い。昨日の疲労からくるものか。「父のほうがよかった
わ。母はなんでこんなにしんどいのよ。天音に関するなんでもかんでも
私がしないといけない。もっと私の躰が弱かったらよかったのに。そう
したらどうにかなってたんじゃない」と夜中に訴えてくる。私、黙るし
かない。なにか話すと険悪な雰囲気になる。

【一月十九日】ヘルパーさんに抱かれている天音の顔がけわしい。母
親が出かけているからだろう。

【一月二十日】天満橋近くの画廊へ陶芸家の友人と「丸木スマ展」を
見に行く。描きたいから描く、楽しいから描く。何歳から始めたってい
いのだ。ちょっぴり力が湧いてくる。

【一月二十一日】ヒロミさん、心斎橋の百貨店で天音のパジャマを買
ってくる。サイズは赤ちゃん用の95というやつ。いま着せているのはど
れも古い。ずっと大きくならないから、古いのでも間に合う。黄色くな
ったのを着せていると、いくらパジャマだからといってもかわいそうに
なって買おうときめたのだった。

【一月二十二日】昨晩といっても朝からだが、天音はよく眠れたよう
だ。こんな日は母も機嫌がいい。

【一月二十三日】妻君プールへ。週に一回通いだして一年になる。

【一月二十四日】母親との入浴後、天音に新しいパジャマを着せる。
身長九五センチ、体重七・五キロ、躰は一歳ぐらいの赤ちゃん並み。大
きくて重たかったら介護はもっと大変だったはず。障害により成長しな
かったのが、ていねいで行き届いた世話を可能にしたともいえよう。
(初出二〇〇〇年「草の根通信」四月号)

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■2■画人手帖その1 「タカハシノブオ」の巻

【タカハシノブオさんの思い出】-----サカモト ユタカ

僕が最初にタカハシさんに出会ったのは一九八〇年五月、神戸の新開
地の本通りを北へ向って歩いていた時、骨格のがっちりした六十代半ば
過ぎの感じの男の人が、地面にすわり込んで一心にクレパスで路地裏か
らさし込んでくる光と周辺の建物を、黄色を基調に数色の色を重ね、親
指が曲る程にぬり込んでいた。

4号程の画用紙に、三〇分程でいきおいよく描かれた透明感のする熱
っぽい絵に僕は引かれ、描き終った男の人に、おっちゃんいい絵やね、
僕好きや、と声をかけた。

おっちゃんの顔は酒で赤く眼光は鋭かったが嬉しそうな顔して、ほん
だらあげるわ持っていき、とおしげもなく作品をくださった。そして、
兄ちゃんわしの家この近くやよかったら寄っていかんか、と言ってくれ
た。

6畳一間の部屋はうす暗く座る所が無い程に荒ゴミから拾ってきた様
々な物、絵を描く為のダンボール群、本が山積みされ自転車が2台と、
とにかくぐちゃぐちゃのおもしろい空間だった。そして描かれた作品が
部屋中にいっぱいだった。

そのときのタカハシさんは、自身のことは何も語ろうとしなかった。
それがタカハシさんとの出会いだった。[2004年11月6日記]


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■3■編輯後記 henshukoki

☆「そぞろ通信」の配信名簿を何号か前に整理し、電子チラシ送信先の
約半分にしました。購読解除したい場合は遠慮なく、件名に「そぞろ配
信停止」と記し、本文は書かない空メールをお送りください。
☆逆に電子チラシは来ているのに「そぞろ通信」は来てないから、送っ
てほしい旨のメール(嬉しい)もくださいね。「そぞろ通信」は、アーカ
イブ(文書保管庫)のつもりで発行配信しております。
☆メールマガジン(略してメルマガ)の分野では、無料で配信することも
含めて【購読】というのだそう。発行者の費用負担はゼロみたいなもの
です。
☆もちろん手間と労役は半病人のGさんにはかなりなものですが、好き
で楽しんでやっている分には続くでしょう。受信側では人によって有難
迷惑かもしれませんがね。
☆今回から新企画【画人手帖】をはじめます。第一回は、天音堂ギャラ
リーによく来られる坂本豊(サカモトユタカ)さん。とりあげた画人は、
神戸港で沖仲仕をしながら町なかで絵を描いていたタカハシノブオ(1
914~1994)です。
☆天音堂でのタカハシノブオ展実現へむけて、坂本さんの助勢をうけな
がら計画をすすめているところです。「画人手帖」は電子チラシにも掲
載します。重複ご容赦ください。

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■蛇の足■

◇天音堂ギャラリーにかかわることは、インターネットの「さるさる日
記」に書いています。これは自分のホームページがなくても、フリー
(無料)でレンタルしてくれるものです。アップロードも実に気軽にでき
るので、ぼくみたいな永遠ビギナーでもつづけてやれている。消息がわ
りに読んでくださればありがたい。購読はもちろん無料です。
タイトルは、【「天音堂ギャラリー」堂守そぞろ日誌】。
グーグルやグーなどの検索サイトでこの言葉を入力してもヒットします。
ここから次のアドレスをクリックしてもサッと日誌へ飛びます。
http://www3.diary.ne.jp/user/348493/
◇ケータイにも対応しています。
http://www3.diary.ne.jp/i_log.cgi?user=348493&log=now

◇急に決まった企画あるいはオフ会とか飲み会の告知、緊急の助っ人の
お願いなどを、この日誌に書いていきます。よろしければ、【更新お知
らせ】に登録してください。

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◎本誌は【1行32字】で改行、閲覧には【等幅フォント】が推奨です
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月刊【そぞろ通信】月号_#41□2005_2_19発行配信
創刊2001-10-16□「あまね通信」改題通巻126号

編輯発行人□山口平明(天音堂ギャラリー)

※転載は全文をコピペ/引用や複製は典拠を注記/平明に一報されたし
※著作権は執筆者に属しますので、転載引用の時にはご配慮ください
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*「そぞろ通信」梅に雨ふる如月号ココマデ。近況お便りください。
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by amanedo_g | 2008-09-11 00:10 | haymay 山口平明
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