人気ブログランキング |

「天音堂」暖かな光残し閉幕(朝日新聞)

f0040342_1519535.jpg


★ギャラリー運営終了について2010年10月25日、
「朝日新聞」朝刊大阪版に記事が掲載されました。※画面内でクリックすると拡大します。

★朝日コムのリンクはこちらからどうぞ。
リンク切れの場合は、左下の「more」をクリックすると原文を読めます。









【天音堂 暖かな光残し閉幕】2010年10月25日

 重い脳性まひを患った娘を亡くし、心にぽっかりと穴のあいた父は、
娘の名を冠した画廊を始めた。7年間で延べ100回以上の作品展を
開いてきたが、娘の死から10年の節目を迎え、25日でギャラリーを
閉じることにした。

 大阪市西区のワンルームマンションの一室にある画廊に柔らかい日
差しが差し込む。窓際には2000年に19歳で亡くなった少女の遺影が
置かれている。近くに住む山口平明さん(67)が「天音(あまね)堂」と
名付けた「画廊兼祈念堂」だ。

 長女天音さんは出産時の医療事故で重い障害を負った。身長約90
センチ、体重7・5キロの体で寝返りも打てず、しばしばてんかんの発作
を起こし、言葉も笑顔もなかったが、ぱっちりとした黒い目が印象的だっ
た。医師は「いつ亡くなってもおかしくない」と言ったが、山口さんと妻の
銅版画家ヒロミさん(65)は献身的な介護を続けた。「天音は私たちの
思いに精いっぱい応えてくれた」。山口さんに悔いはなかったが、その
後娘の不在という欠落感にさいなまれた。

 控えめで消極的な性格の山口さん。ミニコミ「あまね通信」を85号ま
で発行し、天音さんを介する形で人と交わってきた。自分の世界にこも
ることをヒロミさんに心配され、03年に画廊を始めた。

 マンション6階の部屋に靴を脱いで上がるという画廊らしからぬ場所
に、障害のある人もない人も集った。個展を開いてもらう作家は、何度
かのやりとりの中で「心の通じ合える人」に限った。娘が見守る場所で、
心を偽らない仕事を続けたかったから。

 山口さんには脳梗塞(こうそく)の後遺症があったが、「元気になった
とみんなが驚いた。落ち込む暇はなかった」。不景気で利益は出なかっ
たが、「楽しすぎていささか疲れた」という。企画展の準備に負担を感じ
るようにもなり、天音さんの死から10年を迎えた今月、自ら幕を引くこ
とに決めた。

 生前の天音さんを知らない人たちも引きつけた。足しげく通った陶人
形作家の可南さん(57)=堺市南区=は「画廊である前にお堂だから
こそ、みなの優しい心があふれていた。居場所がなくなるようでつらい」
と惜しむ。8回個展を開いた銅版画家梅田恭子さん(39)=埼玉県川
口市=は「いくつもの画廊で展示をしているが、ここは特別。天音さん
を囲むようなあたたかさに満ちていた」と話す。

 「天音」という名前には、「世界を遍(あまね)く照らして」との思いを込
めた。あたたかな光を発した場所は、残影をそれぞれの胸に宿しながら、
幕を閉じる。

     ◆

 25日まで、イラストレーターWAKKUNの作品を集めた「還暦少年
WAKKUNの絵と字と言葉」展を開催中。午後1~7時。今後も部屋は
そのまま残し、天音さんの思い出の品やミニコミのバックナンバー、ヒロ
ミさんの作品などは、求めがあれば公開するつもりだ。問い合わせは山
口さん(06・6543・0135)へ。

[写真説明]
25日で画廊を閉じる山口平明さん。
天音さんの思い出を収めた本棚(左端)は残すつもりだ
=大阪市西区南堀江1丁目の天音堂ギャラリー

[写真説明]
画廊の一角に天音さんの遺影が飾られている
=大阪市西区南堀江1丁目の天音堂ギャラリー
by amanedo_g | 2010-10-25 09:14
<< 【携帯更新101203】土蔵 【展告】10月の展覧会二つ >>