【家族】
版画は、新しい作品が出来上がった時に作家がエディションを決める。
例えば、この作品はエディション20枚と決めると、
一気にその20枚を刷ってしまうのがプロの仕事だ。
しかし、実際には展覧会が近くに予定されていると、5、6枚程度を刷って次の新しい作品に向ってしまう。
ある日気がつくと、その作品が少なくなって刷り増しをしなければならなくなる。
ノートに書いた刷りの記録を見ながら、慎重に色を作って刷ってみるけれど、微妙に色が違ってきたりする。
その日の天候にも、プレス機の圧力にも影響されるから。
今日は極端に色が違う。
ノートにはソルフェリーノバイオレットに少量のディープイエローと書いてあるのに、前に刷っておいた作品と全然違うじゃないか。ジェラニュームレッドに近い色。
記録を間違えたかしら、絶望的な間違いだ。
その色を見つけるのに、またたっぷり時間がかかる。