【レデントーレ教会】
須賀敦子が大好き。
彼女の代表作4冊、「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ霧の風景」「トリエステの坂道」「ヴェネツィアの宿」は何度読んでも感動する。
今、彼女の別の作品「地図のない道」を読みなおしている。
この本には、イタリアの歴史の中の弱い人たちに光があてられて、
彼女がどんな人たちに心を寄せて生きてきたかがよくわかると思う。
この中の「ザッテレの海岸で」は、どこかミステリアスで興味深い文章だ。
2008年、平明とイタリア旅行へ行ったとき、この文章に載っているようにヴェネツィアを歩きたいと思った。
そして、須賀敦子がレデントーレ教会を見た同じ場所で、私たちもその教会を見たのだ。
治癒の望みのない病魔に犯された女性たちが、朝夕眺めて慰められたであろうレデントーレ教会と、彼女が書いている。
12月の寒い夕暮れ、運河の対岸にその教会は青白く浮かんでいた。
この本を読みながら、私はまたヴェネツィアを旅しているような気持ちになる。