タカハシノブオの文章原稿、1980年5月、逼塞から出ていくときの決意表明のような一文。
《一九八〇年五月の俺の66才
ここ20すうにち、俺は夜ひるほとんど眠らず、
ねむれないので夜ひる酒をあふり、
酒の酩酊の中でジッとおのがこころを沈め、
うかびあがるイメージをはやくはやくとサケビながら、
両腕にいだきこみ絵を制作した。
大都会の真夜中のウラ街の
どっかのどよみをかきにかきつづけた。
俺の四丈半は食物と古新聞と絵具の空き箱と
酒ビールのアキカンとあきびんで足のふみ場がなくなり、
まさにブタコヤに変ぼうした。
人はおそれて俺にちかづかなくなった。
オヤジがキチガイになってシラガ頭をふりたて
老いたる一匹の銀キツネになった、眼がつりあがっている。
3年あまりホトンド絵をかかず
うす暗い部室でホトンド出歩かず
ジッと暮してきたのでカネが35萬たまり、
それをまるでゲロを吐く如く使いきったガクブチが部室に充満した。
俺はまず眠ろう。
よるとなくひるとなくねむりつづけよう。
5月の青葉にむせかえりながら…
一九八〇年、66才の俺の5月。》