【19日】8月平常展は本日で終了です━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ===================================================== ★そぞろ通信★3月号*2003-3-16 ===================================================== ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行☆山口平明(天音堂SG) ● *>もくじ<* [1]漫歩系_「それ知ってる」と言われても|山口平明 [2]お気に入り章句_殿山泰司師|平明選 [3]家事細見帖・看病の巻|岡本尚子 [4]編輯後記|へいめい ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1■漫歩系sozoroaruki...............................山口平明 【「それ知ってる」と言われても】 ほんとにちっちゃな世界で生きてきた。悔やんではいない。いないん だけれど、先はそう長くもなさそうだから、わが人生こんなものだった のか、というような感慨はある。じぶんの無知を覚るとでもいおうか。 地下街の喰いもん屋にはいってまだ喰い終わってないのに、女の子が 勘定書きを手に寄ってきて、レジ閉めますのでお支払い願います、と言 われたようなもんだ。 おい、おい、まだ最後の一口残ってんだよう、茶もすすりてえし、爪 楊枝でシーハーやりたいぃのぉにぃ~。まっ、こんな気分かな。ぼくは こういう要請に弱い。働くひとに気を遣ってしまう。おっと、話が逸れ ましたわい。 じぶんの世界が狭くて小さいのは先刻承知之助だ。いまさら六十にも なろうかというGさんが、己の無知ぶりを慨嘆しているわけではない。 だがね、このごろといおうか、当節ちゅうか、なんかものを言うと、き まって「ああ、それ知ってます」と聞き手に返される。ぼくがさかしら なのもあるけれど…。 世の中の人々は、小生が知りえたようなことはなんでもかんでもよお ~くご存じなんである。これぞ情報化社会の成果であろう。そういえば 昔、テレビのせいで国民一億みんなアホになると言うた評論家(大宅壮 一)もいた。 どうやらそうではなかったようだ。むしろ世の人びとは賢くなったの ではありますまいか。私たち国民は、大宅壮一が託宣したようなアホに はならなかった。どころか、そこらのごくいっぱんの人々がもっている 知識情報の類いは相当なものである。 そこへパーソナル・コンピューター(以下PC)の登場とインターネ ットの普及によって、情報を得られる技術が簡単になった。ぼくみたい な半病人のGさんまでがPCをやるようになったんやからねえ。 いまやインターネットを使って、個人が気軽に情報を発信できるよう になった。小生が好きな紙ミニコミの世界とは異なり、PCを使ったウ ェブの世界は独特の広がりをもつ。個人の発信と受信が双方向に瞬時に できちゃうのだ。 これは大いなる変化といえる。とりわけマスコミが、アメリカからの 情報宣伝戦略にのっかり、少数者の情報も個の視点も無視してきた情況 への対抗として大きい変化だと感じる。これは口コミのような強い影響 力と伝播力をもっている。 汎アメリカ化。世界がアメリカのようになればみんな仕合せになれる という信念は、モノとカネを得るということでは大いにグッドであろう。 言い古されてきたことではあるが、善意の押しつけは嫌われる。ブッシ ュ大統領はまるでテレビ宣教師みたいだ。 巨大王権の執行者であるブッシュ氏の無知を、無力なピープルが指摘 できるようになった情況は大きい。善か悪か、知識人か庶民か、二つの 項目を対立させて考えるのはもうずれてて古い。善意の押しつけは悪に 転化する。かつて庶民と呼ばれた人びとは、おおかたここジャパンでは 知識を充分にもった有識者となっている。誰でもコメントできちゃうの だ。一億総「大宅壮一」化ですね。 それ知ってる、とみんなが言ってのける。 ウェブ/電脳網界が世界をネットワークしてしまった。 そして、無力感にとらわれたとき、ぼくは思うのだ。巨大絶対王権を 担い支える賢い人たちが、ぼくに無力感をもたせようと計らったのであ る、と。 チョムスキー老のようにへこまず挫けず明るいノリで行こう。お互い の知ったかぶりとさかしら情報を伝え合おう。イラクの首都バクダッド への、米英による無差別大量虐殺はまだ始まっていない。開戦前にこれ ほど世界世論が沸騰したことは無い。ブッシュ・ジュニアの功績でもあ る。学者・加藤哲郎氏の言うネットワーク型情報戦では、私たちはよく やっているのだから。 ///////////////////////////////////////////////////////////// ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■2■お気に入り章句vignette.....................山口平明抜書 【「A BROTHER」…殿山泰司著『三文役者あなあきい伝』より】 《小学校卒業のころには、おれはもう卵焼をやめていた。三ツ年下の 弟がやっていたからだ。コイツがまた卵焼きが大好き。焼き方を教えて やった。なんだか突然のように弟が登場してきて、ほんまに恐縮。ごめ んください。弟とは、俺のダチである判コ屋や弁当屋とも一緒に、三十 間堀の縁日にも行ったし、二人で銭湯や活動写真にも行った。天にも地 にも二人っきりの兄弟だったもんな。この弟は昭和二十年に死んだんだ。 …中略…、弟のことを思うと、いつも悲しみと憤りが、おれの胸の中を 嵐の如くゴウゴウと吹きまくり、つらくてツラクテやりきれないのです。 弟は敗戦直前の七月、ビルマのインパールの泥の中で戦死してしまった。 日本帝国の糞野郎!! 弟の戦死を知ってからあとのおれのテーマは、 日本帝国の糞野郎だ。戦争で肉親を亡くしたのは、何もおれだけではな い。そんなことは分ってるよ。そんなことは関係ねえ。おれは憎むんだ。 憎むのは自由だ。天皇階下といわれればウンもスンもなかった、あの暗 黒の時間。字イがちがうがな、それは一階二階のカイや、天皇ヘイ下の ヘイは、陛と書くのやでえ。どうでもええわい、ヤマザキ、天皇を撃て! ! どこかできいたことあんな。つまりやね、弟のことをいろいろ考え ると、おれは異常に興奮するんだ。あッいけねえ、鉛筆が折れてしもう たがな。どないしてくれるねん、日本帝国のウンコ野郎!!》(一九七 四年/昭和四十九年、講談社) //////////////////////////////////////////////////////////// ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■3■家事細見帖/看病の巻............................岡本尚子 風邪の子と 籠りきりなり 粥ふきて バタバタバタバタ年中している私が、明日からもっと忙しくなるぞと いう日、重い物を中腰で動かそうとして、腰を痛めた。ものにつかまら ないと立ち上がれない、起きる時の激痛、腰が曲がらない、座れない。 まともに歩けない。 何のことはない、出かけるスケジュールは全部キャンセル。ああ、や るはずだったことをやらなくても日々は過ぎてゆくんだと不思議だった。 床をはってトイレに行く。調理台につかまって立ち、ベントーを作る。 家事というものは全部腰を使うんだと妙にナットク、子どもたちにいろ いろ手伝わせて乗り切った。 何とか痛いながらも動けるようになったら風邪ひき。この一か月膨大 な時間を布団の中で費やした。そんな時間があるなら本でも読みたかっ たなとゼータク心が顔を出す。 自分の風邪が治らないうちに、子どもたちが 次々に倒れた。今日も、 小学生一人、中学生一人がふとんの中である。 看病も家事のうちなのでしょうね。粥をたいたり、食べやすいものを 作ったり。 平明さま。うちではこの間五月人形をしまい、おひなさまを出したと ころです(といっても小さな人形ですが)。わかりますか? 去年の五 月から五月人形を飾ったままで、ひな祭りが近づいて、やっとこさ、入 れかえたというわけです。どんなセーカツなのでしょう…タハハ。 ========================================================= ◎[平明軒雑感] 天音とくらしていて抱っこ隊助手をつとめていたとき、腰をこごめる 動作は日ごろいくらでもあった。二十年におよぶ「天音ぐらし」のあい だ一度として腰痛にならなかった。細君も同じ。不思議で在りがたいこ とであった。もっとも天音が七キロという軽さだったおかげもあろう。 それがだ、天音がいなくなった翌年末、ぎっくり腰になった。続けて 去年末もまたやった。加齢もあろう。脳梗塞により左半身が不自由にな っているのをかばっているのもよくないのかもしれない。だが最大原因 は、パソコン作業での座りっぱなしがよくない。 ぎっくり腰の痛みは激しい。体を起こせない。起こせても歩行がこれ また痛みをともなう。治っていくのはほんの少しずつ。 されどついこのあいだのことなのに、もうあの痛みは細部にわたって は思い出せない。忘れてしまう自分の老人力に感謝をしている。老人力 は刻苦勉励してつけていく力じゃない。いつのまにやら、自然に身につ いている、といおうか。気がつけば、時が味方してくれて、愚案貼らな くてもその境地に行けてしまうんじゃよ。 //////////////////////////////////////////////////////////// ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■4■編|輯|後|記..................................へいめい ◎久しぶりの徹夜。左足が痺れてきた。宮城まり子の『淳之介さんのこ と』(二〇〇一年、文藝春秋)のなかに、高見順の詩が引用してあった。 終わりのほうにこう書いてある。 徹夜の仕事を終えて かえり道 少年が一人 走っている 私も勇気を出して 私を待っていてくれる人々に 私の心を 配達しよう たとえ配達先は わずかでも ◎次号はもう四月ですね。いつも読んでくださって感謝です。読者がい るから発行できてます。春にはいいことがありそななさそな、どっちや ねん。まあ、いずれおいおいとお知らせします。ではお元気で。 ◎本誌は【1行32字】で改行、閲覧には【等幅フォント】が推奨です◎ ================================================================ 月刊【そぞろ通信】3月号_#18□2003-3-16発行配信 創刊2001-10-16□「あまね通信」改題通巻103号 編輯発行人□山口平明(天音堂SG) ---------- ※転載転送はひと声かけとくなはれ。部分引用は掲載誌を送られエ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *「そぞろ通信」3月号kokomade
by amanedo_g
| 2008-08-19 17:53
| haymay 山口平明
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